失敗を防ぐRPAの導入の流れ
欧米諸国の大手企業中心に2015年頃からRPAへ注目が集まっています。日本国内では数年遅れながらもRPA導入が進み始めています。流行に乗ってRPAを導入し、結局活用できなかった、と嘆く前に適切な導入ステップを意識すべきポイントを学びましょう。
このコラムでは、導入ステップ毎に注意すべきポイントをまとめています。
導入目的の明確化
RPAを導入し何を実現させたいのでしょうか?RPA導入を推進している部門と実際に業務をしている部門で、導入目的の認識があっているか明確にすることが重要です。
どちらか一方の声を聞かずにRPAを導入してしまうと協力は得にくいといえます。運用においても部門間の協力体制は非常に重要となるため十分な配慮を意識してください。
また、導入目的によって組むべき体制や効果測定方法も異なります。目的が明確になれば成功基準や定量的な数値目標も立てやすくなります。導入目的を関連部門で共有し、同じ目的に向って進むチームメンバーを募ると良いでしょう。
製品選定
RPAツールは製品毎にさまざまな特徴があります。そのため導入するツール選びを間違うと上手く活用することができずに失敗に終わってしまいます。
トライアルを試す製品を選ぶ際に、以下の3点を意識してみましょう。
・だれがシナリオを作るのか?
・だれがどのように運用するのか?
・どんなRPAツールを選択するか?
◆だれがシナリオを作るのか?
まず考えられるのは、以下の3パターンでしょう。ほとんどの場合は以下の3パターンのいずれかに当てはまります。どの選択肢を選ぶかは、RPA導入の予算や人的リソースによって異なります。
・業務を行う部門でシナリオを作る
・情報システム部門でシナリオを作る
・業者にシナリオ作成を委託する
業者に委託すれば、かなり信頼度の高いシナリオを作成してくれるでしょう。しかし、業者にシナリオ作成を委託するとRPA自体が他人事のように感じてしまい、RPA導入目的に対して積極的に取り組まなくなってしまうこともあるようです。
業者に委託する際には、作ってもらったシナリオについての説明やレクチャーが満足できるものか、事前に十分確認するようにしてください。
◆だれがどのように運用するのか?
これは前述の「誰がシナリオを作るのか?」と同じ選択肢になります。シナリオ作成も運用も委託してしまうのであれば、選択するツールについて深く考える必要はありません。
同じ会社内であってもシステム部と実際業務を行う部門で運用を担当するかでは、選ぶべきツールの難易度は異なります。
◆どんなツールを選択するか?
様々なメーカーのRPAツールが存在するなかで、導入目的にあっているツールは何かを考えましょう。サーバ型とデスクトップ型では価格も処理能力も大きく異なります。
「自社製品といっても、OEMのため製品の詳しい仕様は開発元に問合せが必要でスムーズなサポートを受けられなかった。」「中身は海外製品のOEMで詳しいマニュアルは英語だった、という話はよく耳にします。
大手企業で導入している有名なRPAツールだから成功するとは限りません。事例を参考にする場合は、運用やシナリオ作成の体制、導入規模(企業規模)が近い企業の事例を参考にしましょう。
トライアルとハンズオントレーニング
ツールを決めたらトライアルを申し込みましょう。実際にRPAツールを触る前に業務の洗い出しを行いたくなりますが、実はここが失敗のポイントになることが多くあります。
RPAがどのようなものかよく理解し、どんなことができるのか確認することがトライアルとハンズオントレーニングの目的です。特に重視すべきなのは、RPAを選定する方以外の方もトライアルやハンズオントレーニングを受講する、という点です。
(例)
・自動化の対象業務の担当者
・RPAを操作する可能性のある担当者
・人材不足の部署の担当者
実際にRPAに触れることで、自動化のイメージを持つことができると言われています。自分の業務を自動化する、といっても漠然としたイメージになるため、今すぐに自動化したい業務を担当している方でなくても、トライアルを試すことをおすすめしています。
RPA導入時に業務の洗い出し挫折する例の原因として、RPAでどんなことができるのか分からない、イメージが湧かないまま業務の洗い出しを行うことが挙げられます。トライアルでRPAに触れどんな業務が自動化の対象になるかイメージを持ったうえで業務の洗い出しを進めることで、業務の洗い出しにより挫折を防ぎましょう。
また、トライアル時にハンズオントレーニング等の操作講習を受けられることも重視しましょう。トライアル中に設定の方法を学ぶことができると、効率良くトライアルを進めることができます。
トライアルの必要性や評価の方法はこちらにコラムに詳しく記載されています。
実運用・利用促進
利用目的を明確にし、自社の求めるRPAツールをトライアルしたうえで、いよいよRPAツールの本格導入に進みます。
初めから躓かないために注意するポイントは、
大きすぎる目標を立てないことです。一刻も早く手間になる業務を自動化したい方も多いとは思いますが、最初は簡単な(工程数の少ない)業務の自動化を試みましょう。
難しい業務の自動化は、シナリオ作成で挫折してしまうことが多いため、少しRPAに慣れてからチャレンジすることをおすすめしています。
社内の利用促進には、体制作りが重要です。冒頭の導入目的の明確化にもあるとおり、関連する部門と適切なコミュニケーションが取れていると体制づくりもスムーズです。
推奨するRPA推進体制は、事業部門主体で推進担当部門(IT部門)がサポートする立場にある体制です。
(例)
RPAの推進担当者が実際に自動化対象業務を行う事業部門に寄り添い、チーム全体で目的意識を持って自動化に取り組むことが求められます。
やりたいことが“わからない”でも、興味があるという方には、社内で自動化した業務を共有する勉強会も有効です。気軽に相談できる場を設けることで、RPAや業務改善に関する意見交換など様々な交流が生まれます。
運用体制についてはこちらのコラムに詳しく記載されています。
まとめ
導入目的の明確化
・成功基準や定量的な数値目標を立てやすい
・導入目的を共有することで協力体制を構築できる
製品選定
以下の3点を意識することで自社に合わないツールを選ぶリスクを回避
・だれがシナリオを作るのか?
・だれがどのように運用するのか?
・どんなRPAツールを選択するか?
トライアルとハンズオントレーニング
・RPAを選定する方以外の方もトライアルやハンズオントレーニングを受講する
・RPA理解することで業務の洗い出しもスムーズに
実運用・利用促進
・大きな目標を立てて難しい業務から始めない
・チーム全体で目的意識を持って自動化に取り組む
・社内勉強会などのコミュニケーション場を作る
ペンネーム あゆみさん
仙台市出身
ITソリューションを提供するマルチベンダーで営業・マーケティングを経験し、2019年にテリロジーへジョイン。
現在はRPAツールのマーケティングを中心に活動中。
趣味は温泉旅行だが、若干潔癖症のため大浴場は苦手。