失敗事例から考えるRPA導入の成功の秘訣
■ もくじ
RPAツールを導入する企業の多くは、「残業を減らしたい」「業務負担を軽減させたい」「従業員満足度を上げたい」という理由で導入を進めています。
RPAメーカーやベンダーは、「RPA導入で〇〇時間削減!」という成功事例を掲げているため、「なんとなくRPAを導入すればロボットが人の代わりに働いてくれるのだろう」、というイメージを持つ方もいるのではないでしょうか。
しかし、RPAは万能のツールというわけではないのです。本コラムでは、失敗事例のもとにRPAツール導入を成功させるための秘訣を解説します。
なぜRPAで失敗するのか
RPAツールに対して大きな期待を持ち、導入後に「思っていたものと違う、失敗した」と感じてしまうことは防ぎたいものです。
RPAツールは設定したシナリオを忠実に実行し、休むことなく働いてくれる便利なツールであることには違いありませんが、あくまで人の手で設定したシナリオあっての話です。
失敗したと感じる人の多くは、RPAツール導入時に大きな期待や大きな目標を掲げていたり、RPAツールの機能を事前に把握できていないようでした。失敗した理由で多く耳にする3点は以下の通りです。
- 業務の洗い出しができない
- 社内での横展開が進まなかった
- シナリオ作成が難しく使いこなせない
この3点をもとに、どうすればRPAツール導入での失敗を防げるか考えていきます。
失敗事例1 業務の洗い出しができずRPAツール利用の横展開が進まない
「業務の洗い出し」は、多くの企業が導入後の課題と感じている項目です。しかし、導入ステップの一番はじめに「業務の洗い出し」を思い浮かべる方が多いことも現実です。
こちらの事例は、RPAツール導入後に自動化する業務の洗い出しができないことが原因で、RPAツールは限定的な業務でしか使われなくなっていました。これは「社内での横展開が進まなかった」にもつながる事例で、業務の洗い出しと社内利用促進は密接な関係にあります。
それでは、なぜ業務の洗い出しができないのでしょうか。一口に業務の洗い出しといっても、シナリオ作成するために業務の洗い出しをするには、数多くのプロセスが発生します。
業務の洗い出しは、日頃行っている業務内容を書き出します。企業や部門ごとに業務項目がある場合は、それに沿ってひとつひとつ業務を書き出していきます。業務プロセスだけではなく、使用するシステムとログイン情報、作業頻度・時間、担当者・承認者など多くの情報を可視化する必要があります。次に書き出した業務内容の中から、自動化に適した業務を選定します。どの業務が自動化できるか判断する必要があるのです。
自動化できそうな業務を選定できたら、次に待っているのはわかりやすく体系的に業務プロセスを伝える、というハードルです。社内のRPA担当者や委託業者へシナリオを依頼する場合、詳細に業務内容を伝える必要があります。
「業務を洗い出して、業務プロセスを調べて自動化の対象となりそうな業務を選定し、業務プロセスや使うシステムの情報を体系的に表記した資料を準備してくれたらRPAで自動化できるよ!」
と呼び掛けても、忙しい方々の腰は重いでしょう。実際に業務手順の録画の提出を求められるケースまで存在します。これでは社内から自動化したい業務が集まらず、想定よりRPAの活用範囲が拡がらず限定的な利用に留まってしまうでしょう。
失敗事例2 複雑な業務を自動化させたいRPAビギナー
もう1つの失敗と感じるポイントは「シナリオ作成が難しく使いこなせない」です。
シナリオ作成ができないという声は非常に多く、シナリオ作成で挫折してしまったという企業をたくさん見てきました。その多くは、業務の洗い出しという高いハードルを越え、準備万端で自動化シナリオを作り始めますが失敗してしまいます。
その原因は、難しい業務から自動化しようとすることです。
せっかくRPAツールを導入するのであれば、大変な業務(複雑な業務)を自動化させたいと考えることは自然なことでしょう。
しかし、熟練したRPAのエンジニアでもない限り、導入したばかりのRPAツールで複雑な業務を自動化することは難しいのではないでしょうか。難しい自動化シナリオの作成を試みて無理をしてしまい、使いこなせないと感じ挫折してしまう、という失敗パターンです。あまりRPAの利用イメージが湧かない状態で目標を立てると、大きすぎる目標を立ててしまいます。
また、選定したツールの難易度が高すぎるという場合もあるでしょう。現在の日本では、エンジニア職などのIT人材の多くがIT企業に所属する傾向にあります。そのためユーザ企業の多くはRPA開発にIT人材を十分に確保できていません。つまり、RPA専任のIT人材でなくても利用できる、使いやすさとサポートを重視したツール選びが求められるといえます。
失敗事例から考える成功のポイント
●「業務の洗い出しから始める」をやめて、みんなでRPAを理解する
【解決策】
(1)業務の洗い出しから始めることをやめる
(2)導入前にRPAツールに触れてRPAで何ができるかを知る
業務の洗い出しをする前に行うべきは、RPAで何ができるかを知ることです。
RPAで何ができるか分からずに、最初から頑張って業務の洗い出しをすればするほど疲弊し、初めて作る自動化シナリオに向かない業務を選んでしまいがちです。前述にあるとおり大変な業務(複雑な業務)を自動化させたいと考えて大きな目標を立ててしまうのです。
業務を自動化させたい部門の方が直接RPAツールを試し、具体的な利用イメージを持つことで自動化に向く業務と向かない業務が自然と理解できるようになります。トライアルやトレーニングが充実しているメーカーやベンダーの場合、RPAに関わる可能性がある全員でトライアルやトレーニングを受講し、RPAツールとの相性を確かめることもおすすめです。
●「社内の横展開が進まない」なら、象徴的な業務を自動化させ社内に披露
【解決策】
(1)社内向けのRPA勉強会やRPAお披露目会を開催する
(2)実際に業務をしている利用者やシナリオ作成者が発表する
業務の洗い出しをするよりも、実際にどんな業務を自動化しているのか知ることで具体的なイメージを持つことができます。普段自分も行っているような業務を他の部門では自動化していると聞いたら、「自分の業務も自動化できるのでは?」と思いますよね。
業務の洗い出しは手間がかかり抵抗感を持ちやすいため、社内展開を進めるのであれば各部門が自発的に考えることを促す方法が適しているといえるでしょう。
外部ベンダーに運用委託している場合、社内に業務選定の方法などのノウハウが蓄積しにくいという問題が発生します。社内で横展開するにも外部ベンダーの力を借りる必要があるので、どこまで依頼することができるかを事前に確認しておく必要があります。
●「シナリオ作成が難しく使いこなせない」には使い方を見直す
【解決案】
(1)小さく始める
(2)簡単なツールに乗り換える
使いこなせないと感じてしまう原因のひとつに、初めから難しい自動化シナリオを作成してしまうことが挙げられます。最初から苦戦すると心が折れて、苦手意識を持ってしまうのです。
最初に作る自動化シナリオは、思ったより簡単にできた!と感じるような少ないプロセスでシンプルな業務から始めると良いでしょう。徐々に慣れていくと、難しいシナリオも必ず作れるようになるので、導入初期にRPAに対する苦手意識を持たせないことを重視すると良いでしょう。
そもそも難しいRPAツールを選んでしまった、という場合は思い切って別ツールに乗り換えを検討することも必要です。難しいRPAツールに苦戦し続けるより、早い段階で使いやすいRPAツールに乗り換えることで機会損出を防ぎ、RPA導入の目的に近づけるのでないでしょうか。
また、RPAツールを使い分ける、という選択もあります。RPAを使う人のスキルや部門にあわせてツールを変えることで、自立したRPA運用を推進することができます。各部門でRPAを推進する担当者を専任し、責任をもってRPA運用を支援する体制をつくると良いでしょう。(参考:RPA活用を成功させるための運用体制の作り方)
まとめ
本コラムではRPAツールでよく見かける失敗と、その解決策についてご紹介しました。
プログラミング知識がある専任のプロジェクトマネージャーが、しっかりRPA導入から運用までを管理する場合、本コラムの失敗の例は当てはまらないでしょう。
しかし、中小企業や部門単位でRPAを導入する場合は、RPA担当者が他の業務と兼任するケースと各業務の担当が自分で自動化シナリオを作成するケースが多いです。
中小企業や部門単位で導入された場合に発生する失敗の多くは、RPAの始め方に注意すれば防ぐことができます。
導入予定のRPAツールに触れてRPAで何ができるかを知ったうえで、無理のない簡単なシナリオから作ってみる、というシンプルな考え方をRPAに関わる全員の共通認識としてRPA導入を進めてみてください。
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ペンネーム あゆみさん
仙台市出身
ITソリューションを提供するマルチベンダーで営業・マーケティングを経験し、2019年にテリロジーへジョイン。
現在はRPAツールのマーケティングを中心に活動中。
趣味は温泉旅行だが、若干潔癖症のため大浴場は苦手。